群居せず


 丸山健二著の本の中でたしかこの群居せずというタイトルの本があった。
私が高校生の頃読んだ本の中の著者は、片岡義男・丸山健二・戸井十月の3人だった。
オートバイに憧れた16才。
3ナイ運動の校則を破ってまで、自動2輪の免許を取得した17才。
オートバイとは憧れの対象であり魔法の乗り物。
友人のRZ50を前にしてエンジンをかけさせてもらったり、あるいはまたがるだけでも幸せだった。
そしてクラッチを操作して自分のオートバイで走る事は夢にまで登場し、そして憧れた。
このオートバイという世界を実際に体感するよりも先に活字として描くことができたのはこの3人の著書のおかげだった。

元々集団で戯れるよりも、一人でいる時間が大好きだった私にとって、この3名の作者が描くオートバイそしてツーリングの世界はまさに理想とする世界だった。
オートバイは、一人で乗る乗り物。
そしてツーリングはソロが基本だと当然のように思っていた。

やがてオートバイの免許を取得して原付から400CCの単気筒のオートバイを手にいれて走り回るようになるとソロで走ることにより確固たる当然の事として認識していった。

ソロツーリングの楽しさは孤独を楽しめる事だ。
孤独という単語はネガティブなイメージだが、実際は楽しむことができる。
自分の意志とは関係なく孤独に追いやられる状況は確かにネガティブであるが、自分の意志の元に積極的につくる孤独な時間はもしろポジティブで快楽であることを多くの人は知らない事が多い。

一日を通じてその気になりさせすれば人と会話をするのは給油の時ぐらいであり、数時間も黙っていることができるのである。
そして長いツーリングのあとに、もうそろそろ会話がしたいなという部分を感じてくるようであれば、充分孤独を堪能したことになる。

そして自分の意志次第でさらにその孤独を楽しむことが夜まで継続できるのだ。
林道の途中でテントを張る。小さな管理棟があるキャンプ場。
四国の剣山の谷を延々100キロ以上ダートが続く林道だ。

小雨だった雨がやがて雷雨となる。
自分の他にはキャンプ場はもう一人のオフロードバイクに乗る青年。

彼は安物のテントを買ってはじめてキャンプに出てきたようだ。
アウトドアの道具は価格に非常に正直だ。
彼のテントはものの30分で浸水し、中は水浸しである。
彼は管理棟に逃げ込んでそこの畳に寝させてもらえると言う。
いっしょにどうですか?

せっかくだが、もうすでにテントを張ったし、私のテントは浸水しないからと丁重に断る。
事実その時使用していたテントは翌朝までその土地の水はけの悪さにも関わらず漏れなかった。

さて、ここからが至福の時間である。
食料といえば1食ごとに袋につめた米と塩、そしてチキンラーメンの袋入りがあるだけだが、たかが1週間程度のキャンプツーリングには充分である。

シェラカップに水を入れガスストーブで沸かす。
その中に袋の上からチキンラーメンを手で適当に割ったものを放り込む。
食材的にはチープだが、精神的には贅沢な時間だ。

あとはベーコンをかじりながら、遠雷と雨の音をBGMに読書にふける。
ヘッドライトに浮かびあがる文庫本を読みながら時々、シェラカップに注いだバーボンをちびりとなめながら。

時々ツーリングはソロで走ったことがないとか、あるいはキャンプも一人でしてことがないという話を聞くと少なからず私は驚きを覚える。あんなに楽しい至福の時間を知らないなんて。

もちろん仲間が大勢いるキャンプや、集団で走るツーリングも別の意味で楽しいが、普段いやでも会社や社会の人間関係で挨拶や会話をする日常であるならば休日、しかも非日常を味わえるオートバイに乗るのなら孤独を楽しむのも悪くはない。
休日は孤独のすすめである。

2003年7月3日

I 徒然更新コラムトップページへ I
I HOME I INDEX I SHONAN CH. I FLHR I HITTON I LINKS I
Copyright (C) 1997-2003 By Hitton (JAPAN) All rights reserved.