CAFE SHOZO


秘密の場所


長らくヒミツにしておきたかった場所がある。
人によってはいきつけの飲み屋や蕎麦屋、あるいは秘湯の露天風呂だったりするだろう。
私にとってのそれは、CAFE SHOZOである。

幸か不幸か、インターネットの出現によってナイショにしておこうと思ったところがどんどん有名になり、客が増えすぎて店のキャパを超えて質が下がるという事がある。
いわゆる量の増加は質の低下というやつである。
しかし、商売でやっている以上、流行って欲しいのは経営者もファンも同じであり客が増えたことによりサービスや質が低下するような事があれば、やはりそのお店は所詮そこまでの実力であったと諦めざるを得ないのではないか?。
と無理矢理思うようにしている。
もちろん理想は魅力のままに有名になり商売繁盛だろう。
私がお気に入りの蕎麦屋は有名になっても味やサービス、そして雰囲気も
ヒミツにしておこうにも内容が素晴らしければ素晴らしいほど口コミで広がるものだ。

以前は、オーナーの方も闇雲に宣伝するのを期待していないのでは?
と推測の上で私もあえてこうしてHP上で紹介文を書くこともなかったのだが、今は正規WEBサイトも立ち上がり、さらに有名な巨大サイトや雑誌等でもすでに紹介されているので、私も自分の想いと気持ちを記しておきたいと思う。

よくスターを無名の時代からよく知っていて応援していたのに、最近は、かなりメジャーになってしまった・・そんなスターを応援していく1人のファンの心情に近いのだろう。

CAFE SHOZOとの出会い

今から13年も前の事である。
私が当時勤務していた企業の、大坂から栃木のデザインセンターに転勤になったのは1990年だったと思う。
当時はオフロードバイクと4駆に夢中。
林道やらキャンプやらで、公私共(主に私の方が重点であったが)に栃木県、しかも「那須」という響きは特別な想いと憧れがあった。
転勤後は通勤時に那須連山を眺めながらランドクルーザーでドライブしながら通勤という恵まれた環境であった。

が、人間とは贅沢な生き物で、ないものねだりをする。
大坂ではあたりまえのように存在したいくつかのFMの放送や、大型の書店がない事に気付いた。
自然環境には申し分のない恵まれた場所であったが、いわゆる物質環境的にものたりなさを感じ、さらに文化的空間、気の利いたお店がないことに不満足であった。

 そんなある日の事、職場の上司であるO係長(当時)が、私のところにやってきて少しオカマ系エッセンスの入った口調でこう言い出した。
「ねえ〜。素敵なお店をみつけたんだけど教えてあげようか?」
ちなみにO係長は東京生まれの東京育ちで、大坂から転勤したての私にはかなり不思議なネットリ口調に感じた。
「え?どんな店ですか?」と私。
「若い女の子がいっぱいでねえ〜中には確か、赤いオートバイが展示してあるのよん〜」と上司。
へ〜と話し半分に聞きながら紙に地図を書いてくれたのだが行く気はなかったのである。
私の脳裏にはその説明で、カワサキのFX400がおいてある倉庫のような場所に栃木の茶髪系不良少女が集まるヤンキー御用達の場所?と勝手に勘違いしていたのである。

 それからしばらく月日が経って、先輩若手デザイナーの中で気鋭のSさんと、東京にいたK先輩が、ある日、すごいセンス!素晴らしいカフェとあちこちで説明していて私も聞けば、中央線沿線の阿佐ヶ谷とか荻窪あるいは高円寺あたりにありそうでなさそうなセンスのいいレトロやアンティークな感覚とも違う不思議な感じの気持ちのいいカフェだったと絶賛していたのである。
すかさず仲のよかった同僚とカフェSHOZOに行き、私もその空間の虜になったのである。

会社ではO係長が、
「だから私が前から素敵なとこだとみんなに教えてあげていたじゃないの!」と少し不服そうであった。

初めて行った時は場所がわからず近くまで行って道を尋ねても、地元の人ですらわからないほどで、やっと見つけてもどこから入ればいいのか?という感じであった。

惹かれる空間


毎週のように、その気持ちのいい空間の虜になり、コーヒーを飲むために通った。もちろんコーヒーは文句なしにおいしいけれど、コーヒー以上にそのなんとも表現しがたい、あえて言えば生まれつきのオーナーのセンスとしか言いようがない空間の虜になったと表現するのが正しいと思う。

 元はアパートだったのか倉庫か蔵だったのかよくわからない不思議な間取りで、その元からあった段差や手すりあるいは窓や梁をうまく生かしたまま、上からきれいな色で刷毛でペイントしてあり、漆喰のアイボリーの壁と照明とがバランスよく保たれていて、新しく真似をして同じ空間を作ろうとしても真似できないような雰囲気であった。

 音楽も流れてなくてひたすら静寂の価値を知っている者同士の屋根裏的空間であった。
毎週通って気が付いたのは行くたびに店内のレイアウトも微妙に変化していて行くたびに新鮮な驚きがあった。通常のスポット球ではない本格的なレンズ付きスポットで照らされた一輪差しの赤い花に感激した事もある。

 トイレに感動するというのもおかしな話しだが、トイレにはじめて入った女性は必ずと言っていいほど、感銘を受けて戻ってきた。特に高級な器具を使っているわけでなくむしろ普通によく見かけた水道の蛇口やとってではあるのにその空間のセンスにより、声がでるほどの感動であった。

 一緒に行っていた職場の女性たちは、デザイナーであったことも関係するが、普通の女性であっても少しでもセンスや違いのわかる人なら、その感受性を多いに刺激することにかわりない空間であったと思う。

 ところどころにある机や椅子はいずれも不揃いで、オーナーが吟味してどこかで見つけてきたと思われる家具でった。本棚もおいてあり、借りた事はなかったが、図書館のようの最後の図書カードが入っていた。
 わたしがすでに持っていた本、たとえばデザインの本やインテリアの本、あるいはオートバイの本や片岡義男の単行本などをみつけた時もますますうれしくなった。

オートバイとCAFE SHOZO

職場の連中と冬でも雪がない日などはCAFE SHOZOまでショートツーリングをした。
コーヒーを飲み終えたあと会計を済ませて暖気運転をしていると、SHOZOさんは2階から降りてきて、見送ってくれた。
バイクが根っから好きらしい。
オーナーはオフコースの小田和正さんに少しどことなく似た感じの清潔感あるふれ感じだ。
 ホンダのCB400ファア(昔のいわゆるヨンフォアね)で北海道をコーヒー修行しながら回ったことや、ジムニーのSJ30に乗っているところなども共通な話題が多く盛り上がった。
 私が栃木県を離れても年に何度かは通って、やがてそのオートバイが盗まれた事をオーナーの方から聞き、とても悲しくなった。
思い出のあるオートバイだったであろう事を想像すると、とても残念である。
 一番最近に店を訪れた時は、倉庫にカワサキのバーチカルツインW1が置いてあった。中古で程度のいいやつを見つけてきたそうである。

クリスマスイブ

 やがて雑貨も売るようになり、那須にも2号店ができた。ある年のクリスマスイブの夜、女性と隠密に那須の方のお店に行ったら、屋外で冷やしているであろうクリスマスケーキの箱には濃紺の細いリボンだけでシンプルに白い箱が積んであり、なんとカッコイイのか?と密かに感動していたところ、クリスマスイブで、満席なのにも関わらず、SHOZOさん自らが白い洒落た服装で(和風で言えば割烹着みたいなもんですね)私の目の前に挨拶にきてくれてハズカシイやらうれしいやらの記憶がある。
なにせ周囲はカップルだらけ。
なぜこの男(私の事デスネ)に挨拶に出てきたのだろうか?
何者?この男?という視線を浴びたのである。(ちなみにこの女性ワイフではないので詳しい記述は省略した。検閲済みである)

サマータイム

サマータイムという言葉を初めて意識したのも、このCafeのメニューが最初だった。
夏場のメニューに小さく、当店ではサマータイムを導入していています。と書かれていた。
 サマータイム制そのものよりも、このメニューに書かれた小さな文字とサマータイムという言葉が、みょうに夏の静かなカフェタイムを連想するようなやわらかい語感で印象的だった。

CafeSHOZOの風景

CafeSHOZOの風景は色彩で例えるならやはり白だと思う。
静かでシンプルな空間。
ホストもゲストも、心地のよい空間。
リラックスできる空間。
そして美味しいコーヒーや紅茶。
本来日常にあっていいはずのリラックスできる場所と時間。
しかし私にとってCafeSHOZOの風景は日常でありたいが、日常ではあり得ない非日常。
空間は暗黙のうちに客をセレクトし、空間に似合った人がよりその場の質を高めている。
傍若無人な若者グループは、もっての他だし、おばちゃん同士の息子自慢話は近所のファミレスでやってほしい。
そして、いつ泣き出すかわからない赤ちゃん連れももちろん御法度だ。

最後に訪れたのは2002年の2月だろうか。
その年の秋に子供ができて、わたしはその2月以来CafeSHOZOを訪れていない。
できれば時々1人で訪れたい場所である。
そして娘がもう少しだけ大きくなり、分別がつく年齢に達したならば、真っ先に行きたい場所である。

CafeSHOZO
わたしにとって、いや恐らく日本中を見回しても、最上にして最高の、至福の時を味わうことができるカフェだと断言していいだろう。
いつまでも素晴らしいカフェとして、継続してほしいと願うばかりである。

2003年5月19日

http://www.shozo.co.jp/

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