アナログ的・デジタル的

今まで私自身、アナログとデジタル。それぞれに長所と短所があって・・あるいは今やデジタル技術は生活になくてはならない・・うんぬんかんぬんという釈然としない認識と位置づけであった。そして友人と話をしていてもやっぱり魅力はアナログだよな。あるいはデジタル技術はすごい等の話しをしていたのだが、先日ふと目の鱗が落ちたのである。

 あくまでも私見ではあるが、アナログ、デジタルの関係を対等な領域でとらえようとしすぎていたのかもしれない。あるいはコンピューターという技術的な面ばかりに気を取られてデジタルという意味を技術的にとらえすぎていたのかもしれない。

 敢えて誤解を恐れずに一言で表現するなら
「アナログこそが目的。そしてデジタルは限りなく手段である。」

 音楽で例えてみよう。音楽は楽器あるいは人間の肉声でリズムと音階や音質で構成されたアナログである。演奏と音楽を聴く人間の耳も鼓動を感じる鼓膜もアナログである。人間が作曲した曲を、別の人間が音を聴いて楽しむ。これが音楽だと思う。これを万人がいろんな場所で聴けるようにと音楽を奏でる機械としてオルゴールや蓄音機が出来た。そして音楽テープやDATができてCCD・MDそして先日iPodなるものも買ってみた。
 技術的にはレコードやテープは磁気や溝をひろって音を再生しデジタル機器はデータを再現するので技術的には前者をアナログ・後者をデジタルと一般的には呼ぶが、私は敢えてこれらはいずれもデジタル的な手段だと思う。
 逆に言えば、たとえ作曲がマック上で行われたとしても曲を作るという行為は、行為の上で見れば非常にアナログ的だと考える。

カメラで例えるとこうなる。人々は太古の昔から美しい風景、心に感じた感情をあるときは抽象的にあるときは写実的に描いた。自分自身と自分以外の人も見ることを前提に絵は描かれている。同じ絵はその人にしか描くことができず全く同じものが2度と作れない。そして見る人は描かれた絵画の構図や色彩あるいは画肌や描いたものからいろんな事を感じる。アナログである。
 えがて銀塩カメラが登場した。銀塩カメラは自然界の銀塩に風景を写す行為だ。写真家の狙ったシャッター速度・絞り・フィルム感度。狙いの適正露出と被写体の決定的瞬間の組み合わせは1度だけだ。アナログである。だが狙い通りの撮影が一瞬なのはデジタルカメラでも同じ事である。カメラはテクノロジーとしては銀塩がアナログ、デジタルカメラがデジタルという位置づけだが撮影行為としてはいずれもアナログ的な器機と呼べるのではないかと思う。

音楽にしても映像にしても記録したものを全く同じに再生あるいは複製できるものはデジタルだ。言い換えれば銀塩カメラで撮影したものであっても同時に同じ写真を複数プリントする行為はアナログではなくデジタル的な行為と呼べるはずだ。

私が言いたいアナログとデジタルの関係を少しは感じてもらえただろうか。

考えてみてほしい。あなたが目的とする最終的な到達地点はすべてアナログなのだ。

映画やゲームを楽しむ。デジタルのフルCGだったとしても最終的に人間が求めているのはデジタル技術を駆使したアナログ世界を模倣した景色や動きであったり、あるいは人間がアナログから生み出した物語の面白さだったりするのだ。

いくらネットで簡単に宿が予約できたとしてもそれは貴方が温泉に入って、食事をして景色や会話やそこに生きている実感を感じるというアナログ的な目的に対するただの便利な予約情報道具にすぎない。

キャンプ場の予約や風景や見取り図がどんなにリアルにわかってもあくまでも限りなくリアルなところまでデジタル技術は発達しても最終的には本物としてのリアルにはなり得ないのである。
 あくまでも鼓動を感じるハーレーに跨り、汚れや雨に遭いながらもテントを張りたき火を前に語らい食事をするのが目的である。インターネットで検索したりプランを立てたりする行為ももちろん楽しいが、あくまでもそれは遠足前夜に持ち物を準備する楽しさであって、実際に遠足そのものではないのである。

デジタルだのITだの騒いでみても結局、ガソリンを入れたエンジンで走るクルマやオートバイは魅力的だ。デジタル技術がどんなに進化しても今のところ箱根を音楽を聴きながらドライブする楽しさや、あるいはハーレーの鼓動を感じながら草木の香りを楽しみつつ走るヨロコビは画面に向かっていては味わえるはずがないのである。
 またいかに画素数が多い最新のデジタルカメラを持っていても撮影するのは人間である。人間がその風景に感動しシャッターを押さない限りその場の風景がいかに素晴らしくても写し取られることはない。

数値に置き換えることのできない心地よさ、鼓動はデジタルでは理解できない。

答えはシンプルで明快だ。人間はアナログだからである。

2002年5月16日

I 徒然更新コラムトップページへ I
I HOME I INDEX I SHONAN CH. I FLHR I HITTON I LINKS I
Copyright (C) 1997-2002 By Hitoshi kohno & Hitton (JAPAN) All rights reserved.