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渋温泉 後編 5時起床。ツーリングの朝にまず行うことは外の天気を確認すること。そっとカーテンを開けるとまだ暗い。夏場ならとっくに夜も明けている時間だがまだ深夜と変わらないほど暗い。目を凝らすと点々と星が見える。雲の気配もない。どうやら快晴のようだ。うれしい。 早朝目が覚めた。窓の外を見るとすでに明るくなりかけている。静かにアルミサッシの窓の内側についている障子風の窓をあけると空は曇り空だった。昨夜の天気予報でも今日は雨。昨日が快晴。そして今日は曇りのち大雨の予感である。まあ昨日快晴の秋空の下をツーリングできたから仕方がないかなと心の中で納得する。
携帯電話を懐中時計のように開くと時刻はまだ6時すぎだ。こんな早朝にも関わらずさすが渋温泉。朝から浴衣を着て通りを歩いている人たちの下駄の音が窓越しに聞こえてくる。この旅館の展望風呂は24時間だと聞いていたのでさっそく1人で屋上の温泉にエレベーターで上がる。しかし狭いエレベーターである。大人5人も入ればかなり圧迫されるほどだ。パリ市街のプチホテルなみだ。屋上につくと緑色の石が湯船の向こうに置いてあった。緑石だったか名前は忘れたが、ストレートな名前の岩(石)である。しばらく曇天をみながら湯船につかる。朝シャワーを浴びることはあっても日常生活で朝風呂に入ることはない。これも言い換えれば非日常の時間だ。 さて出発前にもう一度渋温泉でおみやげ物でも買ってからということでハーレーに乗り込む前に渋温泉街を少しだけ散策。照明のせいなのかやはり風情は夜の方があってよい。昨夜つまみを買った時に愛想のよかったお店で各自おみやげを買う。愛想のよさが商売につながっているのかその店だけがお客が多かった。置いてあるモノ、価格も同じとなればあとはいかに気持ちよく買い物ができるか。すなわち感じのいい応対をしてくれるかにかかっている。笑顔は商売の基本なんだということを土産物屋で再認識しつつガレージで荷物をパッキングする。と言っても私の場合はキャンプでもしない限りこの巨大な左右の箱に1泊2日程度の宿泊であれば充分すぎるほどの許容量で荷物を飲み込む。まさにFLH系がツアラーたる所以だろう。旅にでてしまえばたとえ1泊2日程度であっても真価を発揮するロードキングであった。 アトリエに入ると最初の部屋にはコンピューターとプリンター。それに打ち合わせのためのテーブルと一冊一冊全部見てみたくなるようなデザインの分厚い専門書が並んでいる本棚がある。右手方向に進むと次の部屋は新旧のマックがずらりと並んだマックルーム。ここだけで数人働けそうな広さだ。さらに奥の部屋は予備ルームで撮影のミニスタジオができそうな広さがあった。最初の部屋に戻ると壁にはアメリカに大勢いるアメリカ人デザイナーたちのスナップ写真やスケボーで遊ぶ写真等がピンで留めてある。壁には塚田さんがデザインしたスノーボードのグラフィックや巨大なシルクスクリーンが壁にかけてあった。もうGAOさんと私はクラクラである。うらやましいという環境をとっくに通り越しているレベルだ。急にデザインという世界を思い出し、いい年してしてハーレーなんかでフラフラ走っていていいのか?と正しい自分が叱咤する。がもうひとりの太ったバイカーズシェードをかけたブタ風の私が現れて、一言「ええんじゃ」と言い返す。やれやれ始末に終えない自我である。だがそんな事ではまだ終わらない塚田さんスタジオ訪問である。次に左手の方の扉をあけて現れた部屋はシルクスクリーン工房である。巨大なシルクスクリーンが刷れそうな道具が並んでいる。 さらにいくつか階段や廊下や部屋を通り抜けて招かれた部屋がどうやらリビングルームのようだ。メール等にも使うらしいオレンジ系のiMacが部屋のすみに置いてある。巨大な8人〜10人は座れるようなテーブルの周囲に座る。予想通りのステキな奥様が登場し、さらに長野県産のこれぞリンゴ!と呼べるべきリンゴを味わう。旨い。今まで食べてきたリンゴはリンゴあらざるリンゴだ。本物が放つオーラを感じた。 長野県といえばそう、やはり蕎麦でしょう。塚田さんの車に全員乗って、どこを走っているのかさっぱり不明なまま蕎麦屋に到着。 案内してくれた塚田さん 須賀川本そば「栄忠」というお店に入る。場所といいたたずまいといい地元の人しか来ないような雰囲気にワクワク。ストーブのついた少し広いテーブルで座り各自メニューから注文。かなくなにそば切りが好きな私は普通の蕎麦を注文。ところがどうやらここの地域の蕎麦は「はやそば」というのがウリらしい。しかしながらやっぱり私は普通のそば切り系のざる蕎麦(盛りだったかも)を注文した。さすがにGAOさんはその地のメニューの選択をして「はやそば」を注文していた。蕎麦の方は旨い蕎麦だ。(すいません。ここ数年クオリティの高い蕎麦ばかり食べているのでよほど旨い蕎麦か、あすいは水準値以下の蕎麦でないと良くも悪くも判断できない蕎麦好きになってしまったようです。) 気になるGAOさんの注文した「はやそば」は、やはり名物らしく魚も含めて豪華絢爛な皿の数。やや失敗したか選択メニューという言葉が私の脳裏に打ち上げ花火のようにあがったところ、心優しいGAO氏が、「少し食べてみる?」の一声!。
東富士五湖道路入口のわがローキン(777という番号はフィクションです) などと悠長な事を考えることができたのもここまで。東富士五湖道路を降りたあたりでバケツの底をひっくり返したという表現がピッタリの大雨。視界0に近い。前を行く車のテールランプだけが頼りで道幅がどこまであるのかも全く見えない。自動車もワイパーがあっても前がよく見えないのか比較的流れがかなりゆっくりなところがせめてもの救いだ。 November 8 .2001
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