意外な再会(尻焼ツーリング前編)

 4時に目が覚めた。朝の4時だ。普段はこんな時間に起きたりはしない。いや起きられないと言った方が正しい。昨夜はなかなか眠りにつけなかった。だがいつの間にか眠ったようだ。そして今朝は目覚ましよりも早く目が覚めた。そうだ!似ている!。子供の頃の遠足の前夜と当日の朝に。

 今日はツーリングなのだ。大人の遠足はオートバイのツーリングというカタチであのワクワク感を味わうことができる。窓のカーテンを開けて空を見た。まだあたりは暗いが、少し明るくなりはじめた空を見ているとそれはまぎれもない快晴の朝であることがじわじわと確認できるほど雲はない。やはり曇りや雨よりも秋空が広がる予感の朝は最高だ。まずは納豆をかき混ぜつつご飯を食べる。ネギと納豆。旨い。これほど旨いものがあっていいものか!というのが口癖らしく思わずつぶやく私。

 準備を整えて出発準備をしたころ携帯電話が鳴る。友人のGからの電話だ。Gと言ってもデューク東郷ではない。
「起きた?」「では後ほど!気をつけて」と10秒ほどの電話を切る。
 今日の計画は、私が栃木県に住んでいたころ鹿沼の試験場に通っていた頃に知り合った、もう10年来の友人Fとの会話で、
「たまには温泉なんぞに2人でツーリングでものんびりツーリングもいいねえ」
という事から計画ができた。幸いこの日は、私の伴侶も友人の結婚式で、比較的早い時期から認可も受けていたので計画はとんとん拍子に進んだ。

 友人Fと私は、さほど頻繁に会うという間柄ではないし、それほど電話やメールで近況を確かめるということもない。だが昔から年に1度はツーリングに出かけたりという淡々とした間柄だ。2人とも限定解除直後は一時的にカワサキの大排気量車にのっていた時期もあった。そしてわたしが先にハーレーのXLHを買ったときなどは、私よりも友人Fの方がハーレーに詳しく、電話口で
「買ったのはエボ?ショベル?」
と聞かれて私は内心
「エボ?なんの話しじゃ?ショベル?スコップはあるけどのう・・」
などと岡山弁で思考しつつも、わかったようなわかんないような会話をした覚えがある。その電話のあとホットバイクジャパンの6号あたりを一生懸命読んで勉強した(笑)。今でこそハーレーはすべて好きだが、その頃はスポーツスターが好きで、あまりFLH系には興味がなかったのかもしれない。やがて彼は結婚した。内心私は「あーあ、これで当分バイクどころではないな」と思っていた。が!なんと秋の挙式のあと正月を迎えて届いた年賀状には「わたしも念願のアメリカンバイクを買いました」と写真が写っていて見ると、いかにも格好のいいストリップFLHが写っていたのである。

 その後も、あの天神山の「ハーベストタイム」で再会したり、鬼怒川の「ハーレーフェスティバル」等で会う関係だった。関係だったと書くとなんだか変だが決して私たちはモーホーではない。だが世間から変に怪しまれては困る。(笑)だからという意味ではないが、もう1人ぐらいを誘うという事になり共通の友人であるGを誘う。GとFは私を通じての友人だが、互いに距離が近いせいかすでにGとFでツーリング等も出かけている話しを聞いて納得。本来ならネット上で告知したりあるいはDMで大勢の人を誘いたいという気持ちもあったが今回は少人数でいきあたりばったりルートという趣旨だったので水面下イベントとして計画した。

 準備を済ませて外に出ると肌寒い。深まりゆく秋の早朝の空気だ。ハーレー・ダビッドソンのロードキングにかけてあるシートを外す。間違えてアラーム鳴らさないように慎重に各種トラップを解除しハーレーを表通りまで押して歩く。
 車の通りまで出るとガソリンコックをONにしてエンリッチナーを一杯に引く。アクセルを3回だけ1/4スロットル煽りセルスターターボタンを押す。セルモーターの音がしてやがてエンジン始動。重低音が響く。そそくさと走り出す。なぜか脳裏には「あの胸にもう一度」の主人公レベッカが走り出すシーンを思い出す。あの映画もこんな早朝から走り出す。ハーレーはナセル付きの黒いFL。似ている。おおきな違いがあるとすれば、あの魅惑な表情をしたレベッカ役のマリアンヌ・フェイスフルが裸の上に革つなぎを着て走り出すシーンと、裸の大将のような私が納豆を食い終えて走り出す違いだろうか。

 湘南からまっすぐ北上する。まずは関越道を目指す。まだ八王子付近では6時も来ていないのにもう渋滞している。朝の新鮮な排ガス?を吸いたくもないのに吸う。早く街から脱出したい。そう思いつつ八王子を抜けて圏央道の青海I.Cから乗る。

 道中あちこちでハーレー軍団とすれ違う。ハーレーのビッグイベントであるブルースカイヘブンに向かっているのだろう。今回は意図的にブルスカを避けたわけではないが、偶然重なっていたのであった。最初の3人の合流場所は群馬県の高崎市だ。少し前にFが、ネット上でハーレーのシートをオークションで購入し、その時知り合った相手が最近高崎市に輸入雑貨の店を開いたという。その隣にはその友人がカフェをopenさせたばかりなので是非そこを待ち合わせ場所にしようという事で集合場所になった。

 関越道に乗ると事故渋滞が少し続いて快適に流れはじめた。しばらく走って休憩の為P.Aに入る。時刻をみるとまだ8時だ。いかん早すぎる。予定は10時15分にそのお店だったのでまだ2時間以上もあるのに距離的にはかなり近いとこまできている。そこでまったりと紙コップのコーヒーを飲むことに決める。久々にソロツーリングの気分だ。相変わらずハーレーのFLH系に乗っているとおじさんたちの質問攻めにあう。「いくらするの?何キロでるの?重そうだな?」と(笑)パーキングエリア停車用に「よくあるご質問についてお答えします・・・」というプレートを作ってぶら下げておこうかと思うほどだ。(笑)
 ベンチに座るととなりにはガエルネのオフロードブーツを履いた長身のライダーがいた。私も暇だったので話しかけてみると寡黙だったその方は堰を切ったように話しはじめて最近のオフロードバイク事情を説明してくれた。彼はカワサキのKLXに乗っていてこれからML(メーリングリスト)仲間と林道に走りに行くという。今はネットという手段があるので昔以上にコアな林道情報が入手できるらしい。彼は私より一つ年上だった。彼によると最近のオフロード界?唯一の憂いは、20代の若者でオフロードバイクに乗って林道を走ろうという人がなかなかいなくて周囲はほとんどが35才から40代前半のおっさんだらけで(笑)ハーレーだと高速のS.Aなどでも若い男女がいてうらやましいと。なるほど確かに街ではTWやFTRが売れていてもタイヤには泥なんてつまっていないし、走れる道もまた近くにない。いわゆる林道系オフローダーというのはかなり生息数が減ってきているようだ。性格的に天の邪鬼な私は、こんな時だからこそBMWのR80GSや最近だとF650とかもいいですねと言うと、彼も最近の仲間内での人気はF650だと言う。個人的にはハーレー以外でもいろんなオートバイが好きなので多いにバイク談義に花が咲いた。

 と時計を見ると8時40分。いかん40分も話しこんでしまった!少し焦り、話しを強引に終えて立ち上がった。最近ソロツーリングをする機会が減ったせいか道中こんなに盛り上がったのは久しぶりだったなあー。ソロツーリングはいいなあー。などと考えつつ気が付くと高崎I.C出口である。

 時計を見ると待ち合わせまでに1時間以上ある。とりあえず集合場所を確認してみようと集合場所までのメモをみながら進む。途中まではその内容通りに交差点や目印の店が出てくるのだが、「高崎市内環状線に入って17号を超えて・・・」というあたりから、どうも食い違う。地図を見ても目的地らしい町名が出てこないのでコンビニに入って600円の地図を買う。おかしい。その詳細図にもその地名は出ていない。頭の中に?マークが多数表示された頃に、某P社のカーナビのテレビCMを思い出す「道は星に聞く」。そうだ「道は人に聞く」に限る。ガソリンスタンドで目的地の住所を尋ねると5キロ以上も違う。流石に鈍い私でもこの瞬間、案内の誘導が右折すべきところを左折すべきだった記述ミスにやっと気がついた。人間思いこみとはすごいもので、その案内を絶対的なものと信じていると疑う余地がない。おまけに高崎市内の環状線はどちらの方向もやがて国道17号線とクロスしたり近づいたりするので混乱を招く結果となった。気が付くと集合予定時間まであと残り5分。ラリーなら規定時間ぎりぎりのオンタイムという奴だ。

 通常は11時からOPENらしいのだが、今回はわれわれのためにわざわざ少し早く来て店を開けておいてくれたという。うれしい限りだ。やっと店らしき前に近づきハーレーを減速していくと店の前に小豆色のマツダのセダンを洗車している若者がいた。私の中になぜか「ん?????」というマークが点滅する。私はそのセダンの助手席に乗った記憶があるのだ。さらにその若者にも会ったことがあるような・・ないような・・。その若者も洗車の手を休めてこちらを見ている。しばらく沈黙の後にお互いの口から出た言葉は「どうしてここにいるの?」であった。そう彼は知り合いだったのである。意外な再会に、世の中の不思議な縁を感じつつ再会と昔話に花が咲く。(今日はあちこちで花が咲く)

 彼はみんなからケンチャンと呼ばれていて、初めて会ったのは多分5年前の湘南&世田谷チャプターの発足ツーリングの時。その時に私は彼の写真を撮って初期の頃の私のホームページにモノクロで掲載していた。最後にあったのは2年前の湘南チャプターの友人の結婚式の時だった。その頃からあまりチャプターツーリングも回数が減り、私の方はネット系の友人たちとツーリングに行くようになっていたので、今彼がこうして店をOPENしたことすら知らなかったのである。それにしてもいきなりの再会に驚きと意外性のある集合場所となった。
 まだ店に到着していないFに電話すると現在地を聞き、その場所がどこであるかをケンチャンに聞く。電話の向こうではFが私の事を「はじめて会った人に道を聞くのになんて馴れ馴れしい聞き方だろう」と感じていたそうだ。

つづく。

October 18.2001

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