蕎麦

蕎麦は東

もともと西日本で生まれ育ったせいもあって蕎麦はなじみがなかった。瀬戸内海を渡ればそこはうどん王国高松なので圧倒的にうどん環境で育ったのだ。蕎麦といえば、たまにツーリングに訪れた信州でうまい蕎麦を食って、ああ蕎麦もうまいね。という程度だった。今から9年前に仕事の関係で栃木県に移り住んだ。このことが、それまで私の中で圧倒的多数勢力をしめていた米が一番。おにぎり大好き!の人生のうまいもん勢力図を塗り替えはじめるきっかけになったと思う。転勤後しばらく社員食堂の弁当を食っていたが、なにかのきっかけで、昼はいつも同じ蕎麦屋へ行く3人組みとなって天盛りという蕎麦屋にほぼ毎日通った。雨の日も風の日も(笑)。特別安くておいしいというわけではないが、やはり北関東に位置する蕎麦屋だけあってレベルが高い。蕎麦定食にすると、毎日ざる蕎麦とちいさなご飯と一品メニューの日替わりがついてこれが最高だった。こうして2年間の間に私は蕎麦人間へと変化していくのであった。

 話しはそれるが、何もいわなくても蕎麦湯が出てくるのは関東の常識だけど、西日本ではまず蕎麦湯は出てこない。

 西ではあくまでも蕎麦はうどん屋のメニューの第2群として登場するメニューなのだ。以前寮生活をしていたとき、今晩は、うどん屋にでも行く?と誘ったところ東京出身のルームメイトは、うどん屋なんてのがあるかよ!そば屋だろ?と言われて軽いカルチャーショック?を受けた記憶がある。

 出雲蕎麦や出石蕎麦など西にもおいしい蕎麦はあるが、平均的な街を見るとやはり日本の麺類分布は東の蕎麦、西のうどんなのだ。その法則に従って、帰省したときはざるうどんを食べて、関東にいるときは蕎麦を食う。最近でこそ本格的な蕎麦屋(うどんメニューがない)が西にもできはじめてきたが、やはり大きな勢力分布に変化はないようだ。

旅の口実としての蕎麦考

 インターネットを通じて知り合ったハーレー乗りたちと、今年の5月に蕎麦通リング(蕎麦を食うツーリング)に行ってきた。戸隠中社、郡上八幡、開田高原とツーリングを楽しみつつ、うまい蕎麦を食うツーリング。蕎麦屋はそれぞれ好みがあるし価格もみんなの評価も、まちまちだが楽しめた。ハーレーと蕎麦。この組み合わせはいかにもおやじ趣味だけど、これがなかなか相性がよいのではないかと思う。20代の頃はひたすら峠を攻め続け、ひたすらストイックにライディングを磨くオンロードツーリングや、はたまた朝から晩まで、ダートを攻めて、バイクから降りるのはトイレ休憩のみという林道カットビツーリングとかにはまっていた時期もあったが、ハーレーに乗るようになって少し気持ちに変化が生まれるようになった。オートバイ乗りとして、あくまでも旅をするのがツーリングの基本ではあるけども、そこにほんの少しプラスαな、なにかを求めるようになった。その中の一つの要素として蕎麦を食う。というのがあると思う。

 場所もたとえば人里離れた山の中。長野県のワインディングロード。空いた道。青い空。おししい水とくれば、昼飯には、全国どこにでもあるコンビニやレストランにわざわざ入るよりも、やはりそこにしかないうまい蕎麦などが食ってみたくもなる。おまけに最高の山葵も味わえたりする。

 ところで都会の蕎麦は間違った方向性をもっていると思う。うまい蕎麦を食べさせるところはやたら高級感(実際に高い)がありすぎる。その高級感ゆえに蕎麦はスカした食べ物。的な印象を持つ人もいるようだ。そして値段が高い割には量が少なすぎる。がっかり。どんなにうまくても800円も出して3口で終わるような蕎麦はどうも食べた気がしない。逆に大衆的な値段の蕎麦屋の場合はたいがいカレーライスからラーメンまで揃っていてすでに蕎麦屋であることを忘れ去ったかのようなメニュー。それでもと初めて入った店ではくじけずにもり蕎麦を注文してしまうが、やはり予想どおりの蕎麦。悪い意味でこの予想に裏切られた事は一度もない。

 蕎麦通リングでは開田高原の開田食堂で、店の雰囲気や容器、イス全てがチープではあるけども、蕎麦だけは味、値段量ともに満足の行くお店にめぐりあう事ができた。またその量の多さと値段の安さに於いては信州上田の刀屋は最高。1000円札でおつりがくる料金でいやというほど蕎麦が食えるから。大盛りを注文しようとしたらまるで素人お断りのごとく、普通盛りをすすめるあたりが、やる気がある。それでも結局大盛りは食べて、さらに追加してしまった私は怪物くん。

 とにかく蕎麦は都会でも、もっと大衆的な価格で食べたい。確かに手間暇かかっているのかもしれないが、元々は貧困な土地を生かして作った食べ物なんでしょ?と思ってしまう。気取らずけちらず大量のうまい蕎麦を食べさせて下さい。全国のお蕎麦屋さん!

 楽しかった蕎麦通だが、ではどんな食べ物でもツーリングが成り立つかといえば、同じ麺類でも、たとえば全国のうまいラーメン屋をめざして5月にラーメン通リングに行こうぜ!という話しになっても蕎麦ほど盛り上がらないと思う(洒落ではない)。ツーリングの経由先としてはやはり蕎麦と比べるとなんだか弱い。 喜多方や飛騨高山みたいなツーリングに相応しい場所もあるけれどやはり名高いラーメン屋は街にある場合が多いからだ。

 蕎麦通リングの場合ついでに蕎麦屋に立ち寄るというよりはもう少し目的意識がある。かと行って台風がやってたから今回は車で蕎麦を食いに行きましょうというほど目的ではない。あくまでも目的はツーリングだ。蕎麦はわざわざとついでの中間ぐらいに位置する。

 くどくどいろいろ書いたけど、ほんとは理由なんてどうでもいい。旅の目的なんて個人個人で違うもの。どうして蕎麦通リングなんですか?と聞かれると困ってしまう。今度聞かれたたら、登山家みたいに、そこに蕎麦があるからと答えるつもり。蕎麦はあくまでも 口実にすぎませんので、そのへんのとこ深く追求しないでくだされ。とりあえず口が実ります。蕎麦通リング。

 (November.2 1999)

I 徒然更新コラムトップページへ I

I HOME I INDEX I SHONAN CH. I FLHR I HITTON I LINKS I
Copyright (C) 1997-1999 By Hitoshi kohno & Hitton (JAPAN) All rights reserved.