番外編(鈴木氏のカメラウイルス) 

高校生のオリンパスOM-1N購入記

こうなると当然、自分のカメラが欲しくなっていく訳ですが、しかし、現実は”金”です。高校生の自分にはニコンは高嶺の花、将来達成すべき目標でした。そんなとき、先の友人の共通の友人が”オリンパスOM-1”を購入しました。これは値段も安く、”フルマニュアル”で”メカニカルシャッター”、露出計を除けば電池無しでも撮影可能ないわゆる”メカニカル””マニュアル”支持者には理想的なカメラでした。何度かその友人から借りて使ってみたところ、当時としては画期的なコンパクト設計で使い易く、フルマニュアルであること、ファインダーのマットまで交換可能なこと、医療機器でも活躍しているオリンパスの光学技術によるズイコーレンズにこだわりを感じたことなど、「これしかない!」と惚れ込んでしまうのと同時に、なんだか急に”自分のカメラ”が現実味を帯びてきたように感じたのでした。それでも、ニコンよりは安いとはいっても高校生にとっては高い買い物、貯金と相談して、中古でより安くと、方々を探し回ったのでした。

しかしなかなか程度のいい物がなく、「やはり新品でなければだめか。」と半ばあきらめ掛けていたそのとき、近所のカメラ屋さんに偶然一台だけショーケースに中古が展示されていたのです。カメラを探していたわけではなく、何げに通りかかっただけでした。これが非常に程度がよく、新品同様と云ってもよかったくらいで、しかも安かったのです。すぐに店に飛び込んで、見せてもらいました。

惚れました。

灯台もと暗しとはこのことで、「こんなに近くにあったのか。」という思いと同時に、何故か「絶対2度と見つからない。」という恐怖感念で、「すっすいません、すぐにお金を取ってきますので、これを取っておいていただけないでしょうか?」と心の準備が出来ていない状態で、声をふるわせながら”もうひとりの自分”が云ったのでした。一番驚いていたのは本人でした。F1.8の50mm付きで、確か35000円だったと思います。安いでしょう。(と言っても高校生には高額ですが)このカメラ屋は元々中古カメラを扱うカメラ屋ではなく、たまたま一台だけ持っていたのでしょう。そしていつまでも持っていたくなかったのでしょう。しかもこれは、OM-1ではなく、ストロボ台座付きのOM-1Nだったのです。50mmレンズ付きですから、普通なら5万円くらいするのが相場だったと思います。たいした貯金を持っていなかった高校生の私にとって、非常にラッキーな出会いでした。


倒産したカコストロボとOM-1N

カメラを買って数日後、当時よくうちに遊びに来ていた親父の友人でやはりカメラマニアのおじさんに、買って間もない私のOM-1Nを自慢して見せたところ、「うちに取りにくれば、いいものあげる。」とよく判らない約束をしました。

「?」とは思いながらも、「取りにおいで。」というくらいだからカメラに関するものだろうと、数日後に心を踊らせながらおじさんの家にいったら、びっくりするくらいりっぱなグリップタイプのストロボをくれたのでした。

おじさんいわく、”カコストロボ”というストロボメーカーに勤めていた知り合いから、「会社が倒産したので、沢山あまっている。」と貰ったものだそうで、箱も開けていない、全くの新品でした。カコストロボが倒産したのか否かは、判りませんでしたが、親父の小さなストロボしか知らなかった私にとっては、連写が出来る上に20〜30mくらい離れても写せてしまうこのストロボは、画期的でした。このおじさんは、ニコンのFやニコマートを2台くらい持っていたので、今思えば、かなりのマニアだったのだと思います。私が小さい頃から良く知っている人だったので、高校生になった私がカメラに興味を持ち始めたことが嬉しかったのかもしれません。

購入後は50mmレンズ一本で、随分色々と撮りに行きました。先述の友人達と夏休みに一週間ほど旅行に行ったときなど、飯を作ったり、洗濯をしたりしている友人を、盗み撮りのようにして、なかなか味のある写真を撮ったりしました。この時はカコストロボも活躍し、夜のキャンプ場でフォーカスもあやしいまま撮った写真が、あたり一面を明るく写し出したのには驚きました。ときには、OM-1を持っている友人から200mmのレンズを借りたりして近所の石神井公園で鴨を撮ったりもしました。

その後、社会人になって大阪から東京に戻ってから、35〜105mmのズームレンズを買い足し、その後の旅のお供になりました。河野君と同じように、結婚式での頼まれ撮影も数多くこなしました。OM-1Nとカコストロボは素晴らしい活躍を見せ、友人達には重宝な写真家にされてしまいましたが、やはりマニュアル機ではシャッターチャンスをのがすことも多く、残念な思いをしたこともありました。

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